課外で広がる学び
石井 麗子(いしい・れいこ)
自分の進路を考える時や困難に遭遇した時、立ち返ることができる原点があるのはとても幸せなことだと思います。私にとって、それは聖路加の学生生活でした。
当時、私は学士編入学コース(※)で学びながら、「新聞部」と「聖路加和みの会」を課外活動としていました。新聞部は、「聖路加ほっとストリート」を毎月発行していました。すべて手書きで作り、印刷機を回し、紙を折り、研究室や周辺のお店に届けていました。内容は、健康コラムや学生の活動や教員の話、街の情報等です。誰もが読みやすいよう考えたり、近くのお店に突撃インタビューに行ったり……手間はかかりましたが、大変さよりも楽しさが勝っていました。新聞の製作中、手伝いに声をかけてくれる学生もいました。街の方や、接する機会のない先生から「いつも読んでるよ!」と言っていただくこともありました。部員は少数でしたが、ゆるやかな関わりから人とのつながりを感じられる、そんな魅力がありました。
「聖路加歩みの会」は、老年看護研究会の亀井智子教授の研究の一環でもある多世代交流プログラムで、現在も定期的に開催されています。元々、老年看護---特に地域での関わりに興味があり、参加しました。そこでの私は、子どもでもなく専門家でもない、中間の立場でした。小学校高学年の女の子に「前の髪型のほうが良いよ。こうしたら?」と真面目に指導されたり、80代の認知症の方に編み物を教わり一緒に間違えたり……(役に立っていなかったかもしれません)。集まる人たちの考えや経験の違いが山ほどあり、豊かさを感じる、楽しい場でした。一方で、体調や家庭の事情等で辞めていく方たちから、自分らしく生きるとは何かと考えさせられたり……、癒しの時間であると同時に、授業や実習とはまた異なる視点での学びを得られる場でもありました。
2009年に卒業した後いくつかの職を経て、現在の私は、神奈川県川崎市の一般社団法人で暮らしの保健室(※)を中心とした活動に携わり、日々模索と実践の繰り返しです。在学時は授業や実習に必死についていく日々でしたが、そうした中でもさまざまな課外活動に参加できたことは私の財産です。学生の自主性や多様な学びの機会を、先生方が見守ってくださる環境があったからこそだと感じています。これからも、温かくしなやかな教育の場として、聖路加国際大学のますますのご発展をお祈り申し上げます。
Class of 2009。看護師。一般社団法人プラスケア勤務。2014年大学院修士課程修了。旧姓は渡邊。
学士編入コース
1997年、他学部を卒業した学士の編入制度を開始(2年次編入)。2017年には、2年次編入制度に代わり、3年次に編入して2年間で国家試験受験資格を得られる日本初の学士編入制度を開始。
暮らしの保健室
保健師や看護師などの専門職が地域の人々の暮らしや健康、医療、介護の無料相談を受ける施設。秋山正子氏(1973年 衛生看護学部卒業)が、2011年新宿区の都営戸山団地で始めた。