日野原先生との
クリスマスイブ
萱間 真美(かやま・まみ)
クリスマス・イブの午後4時の礼拝で、日野原先生が毎年お話しされていたのは、いつも変わらない「お願い」でした。「あなたたちは、楽しいイヴを過ごしてください。ただその時に、今夜も聖路加の病院で苦しんでいる人や、亡くなろうとしている人がいるということをおぼえて、その人たちのために祈ってください」。
私の家のベランダからは、隅田川を挟んで聖路加国際病院の病室の窓が並んでいるのが見えます。暗くなって、病院の窓に灯がともると、「今日はたくさんの病室に患者さんがいるのだな」と思ったり、「今日あのフロアは灯がないな」と思ったりしながら見つめます。苦しんでいる人、愛する人たちと離れなくてはならない人たちがいることをおぼえて、つかの間祈ります。病院のスタッフはこの夜もそばに居続けていることをおぼえます。心安らかに、主がともにいてくださいますように。
看護学生の頃、日野原先生のお話の中から、「私たちもイブを楽しまなくちゃ」という部分だけを受け取りました。年をとり、家族や自分が病室の灯の中にいることを何度か経験し、寄り添うスタッフ、そこにいる家族の思いを強く感じるようになりました。
シンプルだけれど、心に残る、他者に思いを寄せようと語りかける日野原先生のメッセージは素敵だと思います。
クリスマス礼拝で学生に語りかける日野原先生。103歳(2014年12月)
Profile
Class of 1986。
2004年~精神看護学教授、聖路加訪問看護ステーション兼務、2015年~2018年看護学研究科長(聖路加国際大学)。